──薬は「補助役」、主役はあなたの生活習慣
「なんとなく不調だから、とりあえず薬を飲んでおこう」──そんな習慣が、知らず知らずのうちに日常に根づいていませんか?市販薬は便利で頼れる存在ですが、使い方を誤ると、かえって体の自然な回復力を妨げてしまうこともあります。
薬剤師としての視点から言えるのは、「薬は補助役であり、主役はあなた自身の生活習慣」だということ。今回は、市販薬の“使いどころ”を見極めるための考え方を、具体的な例とともにご紹介します。
使うべき場面:予防が難しい“突発的なトラブル”
まず、市販薬が有効に働く場面は、予防が難しく、急な対応が必要なケースです。
● やけど・虫刺され・切り傷
これらは日常生活の中で突然起こるトラブル。患部を清潔に保ち、炎症やかゆみを抑えるための外用薬は、早めに使うことで悪化を防げます。
使いどころのポイント:
- 初期対応が重要。薬は「悪化を防ぐ道具」として活用する
- 症状が広がる場合は、早めに医療機関へ
● 頭痛・生理痛などの急な痛み
痛みが強く、日常生活に支障が出る場合は、鎮痛薬の使用が有効です。ただし、頻繁に使うようなら、根本原因の見直しが必要です。
使いどころのポイント:
- 「月に何回使っているか」を記録してみる
- 痛みの前兆や生活習慣との関係を探る
使わなくても整えられる場面:慢性的な不調
一方で、薬を使わずに生活習慣の見直しで改善できる不調も多くあります。
● 疲労・だるさ
「疲れたから栄養ドリンク」「だるいからサプリ」という発想は、根本的な解決にはなりません。睡眠・食事・ストレス管理が整えば、体は自然と回復します。
見直しポイント:
- 睡眠時間と質を記録してみる
- 食事のバランス(特にタンパク質)を意識する
● 胃もたれ・便秘
これらも、食生活や水分摂取、運動習慣で改善できることが多いです。薬に頼る前に、食べる時間や内容を見直すだけでも変化が現れます。
見直しポイント:
- 食事は「腹八分目」を意識
- 朝の白湯や軽いストレッチで腸を刺激する
判断力を育てる「3つの問い」
薬を使う前に、以下の3つの問いを自分に投げかけてみましょう。
- これは一時的な不調か?
→ 一過性なら薬でサポートもOK。慢性化しているなら生活習慣を見直す。 - 生活習慣で改善できる余地はあるか?
→ 睡眠・食事・運動のどれかが乱れていないかチェック。 - 薬を使うことで“本来の回復力”が妨げられていないか?
→ 症状を抑えることで、体のサインを見逃していないかを考える。
薬との“ちょうどいい距離感”がQOLを高める
市販薬は、正しく使えば心強い味方です。しかし、使うかどうかの判断を「なんとなく」ではなく、「必要かどうか」で選べるようになると、健康との向き合い方が変わります。
薬に頼る前に、まずは自分の生活を見直す。そんな習慣が、体の声に耳を傾ける力を育て、QOL(生活の質)をじわじわと底上げしてくれるのです。
「薬を使う前に、整える余地はあるか?」──その問いを、今日から自分の中に持ってみませんか?