こんにちは!ミニマリスト薬剤師のyasuです。
暑い夏は、アウトドアやレジャーが楽しい季節!でも、ちょっとした不注意で、やけど、虫刺され、切り傷といった「夏のトラブル」に見舞われることも少なくありません。
「この傷、どうすればいいの?」「どの薬を選んだらいいのか分からない…」
そんな時に慌てないよう、今回は薬剤師の視点から、これらの身近な症状に効く市販薬の選び方と正しい使い方を、科学的根拠に基づきながら、分かりやすく徹底解説していきます。適切な市販薬を選んで、夏のレジャーを思いっきり楽しみましょう!
1. 「あっ、熱い!」急なやけどにどう対処する?
夏はバーベキューや花火、熱い飲み物で「うっかりやけど」をしてしまうことがありますよね。やけどは、その深さによって対処法が大きく変わります。まずは、ご自身のやけどがどの程度か確認しましょう。
1.1. やけどの重症度をチェック!
やけどは、大きく分けて以下の3段階に分類されます。
- I度熱傷(軽度):
- 状態:皮膚の表面(表皮)だけが損傷。赤くなり、ヒリヒリとした痛みがある。水ぶくれはできない。
- 例:日焼け、軽く触れた程度の熱湯、アイロン、ストーブ
- 対処:市販薬で対応可能な場合が多いです。
- II度熱傷(中度):
- 状態:皮膚の深い部分(真皮)まで損傷。赤み、強い痛み、水ぶくれができる。
- 例:熱湯や油がかかった、やかんを倒した
- 対処:水ぶくれが小さい場合は市販薬で様子を見られますが、大きい場合や痛みが強い場合は医療機関を受診しましょう。
- III度熱傷(重度):
- 状態:皮膚の全層が損傷。皮膚が白っぽく、または黒焦げになり、感覚がないことが多い。
- 例:火事、高温の油、化学薬品
- 対処:緊急性が高く、すぐに医療機関を受診する必要があります。 市販薬では対応できません。
【ポイント】 水ぶくれができている場合(II度熱傷)は、自己判断で潰さないようにしましょう。感染のリスクが高まります。
1.2. 応急処置が最優先!
やけどをしてしまったら、まずは痛む部分を流水で15分以上、しっかりと冷やすことが大切です。冷やすことで、それ以上熱が組織に広がるのを防ぎ、痛みを和らげる効果があります。
- 冷やし方:清潔な流水(水道水など)で直接冷やすのがベスト。氷や保冷剤を使う場合は、直接皮膚に当てず、清潔なガーゼやタオルで包んで使いましょう。
- 注意点:服の上からやけどをした場合は、無理に脱がさずに服の上から冷やしましょう。無理に脱がすと、皮膚まで剥がしてしまう可能性があります。
1.3. やけどに効く市販薬の選び方とおすすめ
I度や軽度のII度熱傷であれば、市販薬で対応できます。
① 炎症を抑え、痛みを和らげるタイプ
- 特徴:やけどによる赤みやヒリヒリとした痛みを抑える成分が配合されています。
- 主な成分:ウフェナマート、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルレチン酸など
- 選び方:ステロイド成分が含まれていないタイプが多く、顔などデリケートな部分にも使いやすいです。
- おすすめ商品:
- アズノール®︎軟膏:アズレンスルホン酸ナトリウム配合で、穏やかに炎症を鎮めます。
- ウフェナマート製剤(例:フェルゼア®︎軟膏、キュアポ®︎L軟膏など):非ステロイド性抗炎症成分で、やけどの炎症を抑えます。
- 使い方:患部を清潔にし、薄く塗り広げます。
② 皮膚の修復を促すタイプ
- 特徴:傷んだ皮膚の再生を助ける成分が配合されています。
- 主な成分:アラントイン、パンテノール(プロビタミンB5)など
- 選び方:炎症が落ち着いた後や、軽度のやけどの治りを早めたい時に。
- おすすめ商品:
- オロナインH軟膏:クロルヘキシジングルコン酸塩とヒビテン配合で、殺菌消毒作用もありますが、軽度のやけどによる損傷の治癒も促進します。
- アットノン®︎(傷あとケア):ヘパリン類似物質配合で、やけど後の皮膚の再生を助けます。傷あとケアに特化した商品ですが、初期の軽度なやけどによる皮膚の乾燥や再生促進にも使えます。
③ 殺菌・消毒作用のあるタイプ
- 特徴:やけどした部分の細菌の繁殖を抑え、感染を防ぎます。
- 主な成分:アクリノール、スルファジアジン、塩化ベンゼトニウムなど
- 選び方:水ぶくれが破れてしまった場合や、感染が心配な場合に。
- おすすめ商品:
- ドルマイシン®︎軟膏:2種類の抗生物質(コリスチン硫酸塩、バシトラシン)配合で、幅広い細菌に効果があります。
- テラ・コートリル®︎軟膏:抗生物質とステロイドの配合で、炎症を抑えつつ感染予防もできます。ただし、ステロイド配合のため、顔や広範囲の使用は薬剤師に相談しましょう。
【注意!】 広範囲のやけど、III度熱傷、やけどの場所が顔や関節、性器などデリケートな部分、乳幼児のやけど、痛みが非常に強い場合、感染の兆候(赤み、腫れ、熱感、膿)が見られる場合は、迷わず医療機関を受診してください。
2. 「かゆい!」虫刺されを掻きむしる前に
夏のアウトドアにつきものなのが、蚊やブユ、アブなどの虫刺され。かゆくてついつい掻きむしってしまいますが、適切なケアをしないと悪化してしまいます。
2.1. 虫刺されの種類と症状
刺された虫によって症状は様々ですが、一般的には「かゆみ」「赤み」「腫れ」が主な症状です。
- 蚊:最も一般的。刺された直後にかゆみと赤みが生じ、数時間でピークに。
- ブユ(ブヨ):刺された直後は痛みがないことも多いが、数時間~翌日に強いかゆみ、赤み、腫れ、しこりが現れる。治るまでに時間がかかることが多い。
- アブ:刺されると激しい痛みと強い腫れが生じる。
- ハチ:激しい痛みと腫れ。アナフィラキシーショック(重篤なアレルギー反応)のリスクがあるため注意が必要。
- ムカデ:激しい痛み、腫れ、しびれ。
2.2. 応急処置:掻かないことが重要!
虫に刺されたら、まずは流水で洗い流し、清潔にしましょう。そして、絶対に掻きむしらないこと! 掻くことで炎症が悪化したり、細菌感染を起こしたりする原因になります。
2.3. 虫刺されに効く市販薬の選び方とおすすめ
かゆみや炎症を抑えることが中心です。
① ステロイド配合タイプ(最も強力なかゆみ・炎症止め)
- 特徴:ステロイドは、体内で作られる副腎皮質ホルモンを人工的に合成したもので、非常に強力な抗炎症作用と抗アレルギー作用があります。虫刺されによる強いかゆみや腫れ、赤みを素早く抑えます。
- 選び方:
- アンテドラッグステロイド:患部でしっかり作用し、体内に吸収されると分解されるため、副作用のリスクが低いとされています。
- ストロングクラス:ブユ、アブ、毛虫などによる強いかゆみ、腫れに。
- ミディアムクラス:蚊などの一般的な虫刺されに。
- おすすめ商品:
- ムヒアルファEX®︎(アンテドラッグステロイド配合):強いかかゆみや炎症に。
- フルコート®︎f(フルオシノロンアセトニド配合、強力なステロイド):特に症状がひどい場合に。ただし、顔やデリケートな部分への長期使用は避けるべきです。
- ベトネベートN®︎軟膏AS(ベタメタゾン吉草酸エステル配合、アンテドラッグステロイド):抗生物質も配合しており、化膿を伴うかゆみにも。
- 使い方:1日数回、患部に適量を塗布します。ただし、長期連用は避け、5〜6日使用しても改善しない場合は医療機関を受診しましょう。
② 非ステロイド系抗ヒスタミン剤・局所麻酔剤配合タイプ(穏やかなかゆみ止め)
- 特徴:かゆみの原因物質(ヒスタミン)の働きを抑えたり、神経に作用してかゆみを麻痺させたりします。ステロイド配合に抵抗がある方や、比較的症状が軽い場合に。
- 主な成分:ジフェンヒドラミン、リドカイン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、フェノールなど
- 選び方:お子さんや、顔など皮膚の薄い部分に使用したい場合に。
- おすすめ商品:
- ムヒS®︎:ジフェンヒドラミン(かゆみ止め)やL-メントール(清涼感)配合。
- ウナコーワ®︎エースL:リドカイン(局所麻酔)やかゆみ止め成分、クール成分配合。
- 使い方:1日数回、患部に塗布します。
③ その他の成分
- 清涼感成分(メントール、カンフル):かゆみを一時的にごまかす効果があります。
- 殺菌成分(イソプロピルメチルフェノールなど):掻きむしって傷になった場合の感染予防に。
【注意!】 ハチに刺された、広範囲に症状が出ている、全身にじんましんが出た、呼吸が苦しいなど、アナフィラキシーショックの疑いがある場合は、すぐに救急車を呼ぶか医療機関を受診してください。特に、以前ハチに刺されてアレルギー症状が出たことがある人は、より注意が必要です。
3. 「痛い!」切り傷・すり傷の正しいケア
ちょっとした不注意で、包丁で指を切ったり、転んですり傷を作ったり…日常茶飯事ですよね。
3.1. 切り傷・すり傷の応急処置:まずは「洗う」!
傷ができてしまったら、何よりもまず清潔な流水で傷口を洗い流すことが大切です。
- 目的:傷口についた泥や砂、雑菌などを洗い流し、感染を防ぎます。
- 洗い方:石鹸を使ってもOKです。優しく、しかししっかりと洗い流しましょう。
【ポイント】 出血がある場合は、清潔なガーゼやティッシュで傷口を直接圧迫して止血します。しばらく圧迫しても血が止まらない場合は、医療機関を受診してください。
3.2. 切り傷・すり傷に効く市販薬の選び方とおすすめ
傷の種類や深さによって使い分けましょう。
① 消毒・殺菌タイプ(感染予防)
- 特徴:傷口の細菌を殺菌・消毒し、感染を防ぎます。
- 主な成分:ポビドンヨード、ベンザルコニウム塩化物、アクリノール、イソプロピルメチルフェノールなど
- 選び方:軽度の切り傷、すり傷、靴擦れなど、感染が心配な場合に。
- おすすめ商品:
- イソジン®︎(ヨード液):広範囲の消毒に。ただし、色が付くことと、甲状腺疾患のある方は注意が必要です。
- マキロン®︎(消毒液):ベンザルコニウム塩化物配合で、色がつかず、比較的刺激が少ないです。
- ドルマイシン®︎軟膏:抗生物質配合で、細菌感染の予防・治療に。
- 使い方:傷口を洗い流した後、適量を塗布します。
② 傷の治りを促進するタイプ(湿潤療法)
- 特徴:傷口を潤った状態(湿潤環境)に保つことで、皮膚の再生を促し、痛みを和らげ、きれいに治すことを目指します。最近は、この「湿潤療法」が主流です。
- 選び方:軽度〜中程度の切り傷、すり傷、やけど(水ぶくれが破れていないもの)。
- おすすめ商品:
- キズパワーパッド®︎(ハイドロコロイド絆創膏):傷口から出る滲出液(ジュクジュクした液)を吸収してゲル状にし、最適な湿潤環境を保ちます。絆創膏タイプなので手軽に使えます。
- プラスモイスト®︎:ハイドロコロイド材を用いたドレッシング材で、傷の大きさに合わせてカットして使えます。
- 使い方:傷口を清潔にし、水気を取り除いてから密着させます。傷が治るまで貼りっぱなしにするのが基本です。
③ 保護・被膜タイプ
- 特徴:傷口を薄い膜で覆い、外部からの刺激や感染を防ぎます。
- 主な成分:ピロキシリンなど
- 選び方:小さく、出血の少ない切り傷で、水に濡らしたくない場合(例:指先のささくれなど)。
- おすすめ商品:
- サカムケア®︎:塗ると透明な膜を作り、水仕事などから傷を保護します。
- 使い方:傷口に薄く塗り、乾燥させます。
【注意!】 深い切り傷、広範囲の傷、異物が深く刺さっている傷、出血が止まらない傷、動物に噛まれた傷、感染の兆候(赤み、腫れ、熱感、膿、強い痛み)がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
まとめ:正しく選んで、安心安全な夏を!
やけど、虫刺され、切り傷は、日頃の生活で起こりやすい身近なトラブルです。 それぞれの症状や重症度に合わせて、適切な市販薬を選び、正しい方法でケアすることが、悪化を防ぎ、早く治すための鍵となります。
「これって市販薬で大丈夫?」 「どの薬を選べばいいか分からない…」
そんな時は、お近くの薬局やドラッグストアで、ぜひ薬剤師にご相談ください。あなたの状況に合った最適なアドバイスをさせていただきます。
正しい知識と準備で、今年の夏も健康に、そして楽しく過ごしましょう!